ダイオキシンの問題から、政府やマスコミの情報操作の問題を考えるpart1
http://uyotoubatsunin.seesaa.net/article/20891539.html
の続きです。
一番はっきりするのは、Amazonで「ダイオキシン」をぐぐった場合で、私が検索した範囲では、「ダイオキシン」を表題などに含む和書の数は455件であり、同様に「dioxin」を表題に含む洋書の数は45件であった。
http://www.google.com/では、2,260,000件、dioxinでは、7,130,000件。しかし、日本の人口が1億3000万人弱であり、英語のdioxinの約3分の1に達する数となれば、異常というほかはない。
2002年にダイオキシン国際大会に日本から約160人が参加しているが、参加者800人のうち2割を占めていて、アメリカの100人やドイツの60人を超越しているのである。
正確にいえば、ダイオキシン国際会議ではなく、正式名称は"環境汚染性ハロゲン化合物と環境残留性有機物に関する国際シンポジウム"という名称である。ダイオキシン会議は略称であるが、98年以降は正式名称からダイオキシンの名前が消えている。国際社会の場ではダイオキシンは環境残留性有機物の一つという認識になっており、ダイオキシンを単独で取り上げる発表もなくなり、これを問題視する研究者がずいぶん減っているというのが国際的な潮流である。
●日本においてダイオキシンになぜ異常な関心が集まったのか
ダイオキシンに対する関心の高さは日本特有の現象である。ダイオキシンに対する日本の盛り上がりは1997年代にかけて形成されたようだ。
長山淳哉著 しのびよるダイオキシン汚染(1994年、講談社)
脇本忠明著 ダイオキシンの正体と危ない話(1998年、青春出版社)
宮田秀明著 よくわかるダイオキシン汚染(1998年、合同出版)
井口泰泉著 生殖異変(1998年、かもがわ出版)
これら4人が発表した著書により国民にダイオキシンの危険性が一挙に認識されるようになったのである。「第一人者」である彼らの発言はマスコミも評論家も政治家も研究者もなんら疑うことなく信用した。さらにマスコミや評論家や政治家なども煽る形で、国民も信用した。誰も情報を疑うことなく、鵜呑みにしてダイオキシンの危険性が一人歩きし、国民的ブームとなったのである。極端な方向に走る日本人の国民性ではないだろうか。
ダイオキシンの危険性で叫ばれているのは、主に8つで、
1.ダイオキシンの毒性はサリンの2倍で青酸カリの1000倍である
2.ダイオキシンは人工物質で、主に塩素系プラスチックの焼却から生じる
4.ダイオキシンには強い発ガン性がある。
5.所沢市近辺の「産廃銀座」で新生児死亡率が上がっている。
6.家庭のゴミ焼却が新生児死亡率を上げた。
7.ダイオキシンが新生児や乳児のアトピーを増やした。
8.ダイオキシンの「環境ホルモン」作用が生物をメス化させている
などである。
●ダイオキシンの危険性
1.ダイオキシンの毒性はサリンの2倍で青酸カリの1000倍である の論点について考察していきたい。
これが、その化学構造式であり、非常に安定である。半数致死量の数値が非常に小さい猛毒である。ダイオキシン222種のうち、最も毒性が強い。半数致死量というのは、ある動物(たとえばマウス)100匹に与えたら、50匹が死ぬ量を、個体の体重1kgに換算した数値のことである。数値が小さいほどもちろん、毒性が強いことを示し、単位はμg/kgである。μg=10-6gである。(なお、単位については、省略させていただく)
モルモットに対する半数致死量は0.6〜20であり、人に対するサリンの半数致死量とされている200や青酸カリの3000よりも格段に小さくなっている。ところが、これにもからくりがあって、TCDDの毒性は動物実験の系統によって、大きく異なってくるのだ。
ミンク5、ラット10〜300、マウス100~3000、ハムスター1000〜5000、ウサギ100、サル50である。
モルモットの0.6を基準にすれば、ダイオキシンの一種TCDDは非常に猛毒であるといえるが、ハムスターの5000を基準にすればさほどちまたでいわれているほど猛毒ではないということである。見てのとおり、動物実験の系統によっても、さらには、同じハムスターやマウス、ラットであっても大きく数値が開いてくるのである。ここまで開きがある数値をダイオキシンの毒性判断の根拠とすることはできないはずである。人に近いサルをどう評価するかという問題もあるが、チンパンジーやゴリラなど他の霊長類・類人猿のデーターがない以上判断ができないし、動物実験の結果を直接人の数値と比較することはできないのである。
結論としては、モルモットの半数致死量0.6を当てはめても、ダイオキシンの毒性は日常生活ではまったく問題にならないのである。どのような猛毒も一定以上が体内に入らない限り、急性毒性の上ではまったく問題がない。ある物質が毒になるかどうかは摂取量や体内濃度に左右されるのである。
人間が1日に摂取するダイオキシンの量は100pgである。1kgあたりに換算すると、体重50kgの人間と考えて、約2pg程度である。pgは10-12gである。
半数致死量の0.6をpg単位に換算すると60万となって、人が日常的に摂取する量の30万倍となる。ダイオキシンの多くを食事から摂取すつため、おおよそ30万日(820年)の食事を一度にして、ようやくモルモットの半数致死量に達することになるのである。したがって、ダイオキシンの毒性はともかく、リスクを総合的に考えて話題にするほどの何でもない物質だということができるのである。
ただし、日常的には問題ではなくても、一度に大量のダイオキシンを摂取するような事態はどうだろうか。それについては、イタリアのセベソ市での事例がある。1976年7月にセベソ市で、農薬工場が爆発し、大量のTCDDが周りに撒き散らされたという大事故が起こった。約3万人の住民が少なくとも300gのTCDDに被爆した。住民のTCDD摂取量は8.4μg/kgと推定され、モルモットの半数致死量の最小値の14倍に相当する量である。しかし、大量のダイオキシンを浴びた住民のなかには、一人の死者もでずに、報告されている具体的な被害といえば、塩素座瘡のみである。発ガンなどの慢性的な被害についてはわからないが、死者がでていないというところには驚くべきことかもしれない。家畜の大量死は報告されている。もともと、人間というのはダイオキシンに耐性があるのかもしれない。無論、農薬工場を経営していた大企業はこの大事故を隠蔽していた経緯もあり、政府や業界による隠蔽の可能性もあるので、セベス事故で死者がでなかったことでもって、ダイオキシンの大量被爆による危険性が排除されるわけでもあるまい。とはいえ、これはあくまで特殊な事故の例であり、日常生活に結びつけて考える性質のものではないのである。
2.ダイオキシンは人工物質で、主に塩素系プラスチックの焼却から生じる に関してはいうまでもなく完全な誤りである。
実はダイオキシンは人工的に作られた物質ではなく、天然にありふれた物質である。炭素、水素、酸素、塩素の化合物であり、恐竜時代からある山火事でも発生する天然物である。ゴミから、塩化ビニルを取り除いても、ダイオキシンは発生するし、新聞紙や生ゴミを燃やしても何を燃やしてもダイオキシンは発生することが分かっている。
4.ダイオキシンには強い発ガン性がある。ということであるが、調査によれば、強い発がん性ではなく、弱い発がん性があるとほのめかされる程度であるという。一般人の100〜1000倍ダイオキシンに暴露された集団(主として農薬工場の作業員)がガンで死ぬ帰依kんせいは、対照郡の1.4倍であるということである(これは一日にタバコを一本吸うか、その副流煙を吸う人と同程度)。国際ガン研究機関が発ガン性ありと認定したものの、通常は心配ない程度であるが、国際機関によって認定されることで過大に増幅されることになった。
イギリス保健省や厚生省は通常の摂取量で、発ガン性は見られないとしている。
5〜8のダイオキシンが新生児に与える影響についても、たとえば所沢市の新生児死亡率は1970年代から現在まで一貫して低下しているので、その産廃処理との相関は見られないということ。5〜8の主張についても科学的な根拠は証明されてはいないことだ。長期的な発がん性や催奇形性の問題、免疫機能、アレルギー、甲状腺機能へのダイオキシン摂取の影響についてはまだまだ、調査を待つ必要があるし、業界や(国際)政治の圧力で研究調査が捻じ曲げられたりなど、イギリス政府や日本政府などの調査結果を鵜呑みにすることもできないが、狂ったように騒ぐようなことではないというのが、これまでの結論である。次回part3で
はさらにダイオキシンを含めて、身の回りの毒物を交えながら、環境問題に関するあり方を私なりにまとめたいと思います。以上